駆けろ!メガネプロダクション

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episode9

EPISODE 9

SNS小説『駆けろ! メガネプロダクション』連載第4話の1を配信!

夜目の利かないグラサンを社宅に送り、ハイテクが事務所に戻ってきたのは深夜2時を回ってからのことだった。

雨粒のついた傘を傘立てにさして、事務所のドアに鍵を差し込む。

回らない。

 

ハイテク(誰かいるのかしら……)

 

警戒しつつ、ドアノブを回して押す。

正面の事務机には、ローガンが座っていた。

 

ハイテク「あれま、社長。まだ帰ってなかったんですね~」

ローガン「ん? ああ、少し仕事が残っていたからね。ちょうど今終わったところだ」

ローガン「君こそ、たまには帰ったらどうかね」

ハイテク「あは~。帰るのめんどくさいです。ここにはシャワーもありますしー」

ローガン「やれやれ、これではまるで私がこき使っているみたいではないか。今日も目の周りに隈がひどいぞ」

ハイテク「あはは~、隈は社畜の勲章ですからぁ」

ローガン「美人が台無しだねぇ」

ハイテク「あは~。うれし~。でも、昼に外を歩けないあたしだけ、タレント活動ができていないですからね。これくらいは頑張らないと」

音声はこちら

 

眠そうな半眼で事務処理を行う。

表計算ソフトでの経理から、各メガネたちのスケジュール調整まで。

 

ローガン「私は先に帰るよ。君もほどほどにしたまえよ。明日の自分に仕事を投げることも大切だよ」

ハイテク「はいは~い」

ローガン「鍵、内側からでいいから掛けといてくれたまえ。物騒だからね」

ハイテク「ラジャ~で~す」

 

ローガンが去って、事務所のドアが閉ざされる。しばらく黙ってキーを打って。

ハイテク「う~~~……ん」

カラダを伸ばす。

 

ハイテク(実体を持つと疲れるなあ。食べなきゃいけないし、肩も凝るし、眠くもなるし)

 

一息ついて、事務机の引き出し奥の VR セットを取り出して、PC につなぐ。メガネをすっぽり覆うようにゴーグルをかぶって目を開けると、そこはすでに VR 空間だ。

ハイテクがネット空間にログインすると、中継地点であるイーサネットには、すぐに得体の知れない生物たちが集まってきた。

あるものは球体に目がついただけの生物で、またあるものはつぎはぎの人形である。四角い物体に目があるだけのやつもいる。

VR 空間に降り立ったハイテクもまた、すっぽりと大きなローブに身を包んだ、まるで魔法使いか魔女のような服装になっていた。

ハイテク「やっほ」

???「やあ、メガネウィッチ」

???「こん~」

???「……」

 

彼らは全員、現実世界では実体化できなかったデジタル付喪神だ。

球体はサッカーボールの、針金人形はぬいぐるみの、四角いものは旧式のブラウン管テレビのものだが、霊格が低く、いずれも現実世界では実体を得ることができなかった。

しかし VR 空間であれば、擬似的な肉体を得ることは比較的たやすい。OA メガネの付喪神であるハイテクが、姿を変えて魔女の服装で顕現したように。

もちろん、目元の隈は消えている。そこまで再現する理由はないのだから。

ハイテク「は~い、今日は何して遊ぼ~?」

ブラウン管テレビの画面が揺れて映る。

テレビ「●●オンラインⅩに、ブルードラゴンを退治しに行こー!」

ボール「それより○●△●にハッキングをかけて、人工衛星から宇宙を見てみたいっ。宇宙船の内側も!」

 

ーつづくー