駆けろ!メガネプロダクション

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SNS小説『駆けろ! メガネプロダクション』連載第4話の2を配信!
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EPISODE 10

SNS小説『駆けろ! メガネプロダクション』連載第4話の2を配信!

呪いのぬいぐるみ「それなら国取り合戦か麻雀とか――」

ハイテク「それは却下」

呪いのぬいぐるみ「あいっ」

 

ハイテク「今日はブルードラゴン退治と、宇宙観光にしよっか~」

テレビ「さんせー!」

ボール「楽しみだね!」

呪いのぬいぐるみ「ひゃっはー! あの宇宙の星々を奪い取れえっ!」

ハイテク「じゃあ、あたしにつかまっててね。飛ぶよ~」

 

歪なキャラたちと人間の作ったゲームを楽しみ、人間の作ったシステムを利用して、原初の大自然を謳歌する。

ハイテク(この時間が好き。元が OA メガネだから、性に合ってるのかしら。でも、一番好きな時間は……)

無限に広がる VR 世界と、無限に広がる宇宙を、深夜であるにもかかわらず朝方まで楽しんだ。

 

一通り遊んで、イーサネットへと戻ってくる。

 

テレビ「実体化できないぼくたちといつも遊んでくれてありがとね、メガネウィッチ」

ボール「いつかぼくらも、現実世界で君に会いたいな」

呪いのぬいぐるみ「そうしたら現実世界を血の色に染めてあげられるのにね?」

ハイテク「それは却下」

音声はこちら

呪いのぬいぐるみ「あいっ。じゃあ、わたしたちに手伝えることはあるある?」

ハイテクがうなずく。

 

ハイテク「じゃあ、またネット上でメガネプロダクションの評判でも上げといてもらえるかな~?」

テレビ「お安いご用だー! ぼくは掲示板でメガネアイドルツーポンちゃんの動画を宣伝しとくね!」

ハイテク「うんうん。本人も喜ぶと思う」

ボール「じゃあぼくは、グラサンパイセンが休日にこっそりやってるボランティア活動の写真を貼りまくっちゃおう」

ハイテク「うんうん。本人はブチキレるかもしんないけど、それも結構いい宣伝になるわ~」

 

呪いのぬいぐるみ「じゃあわたしは――」

ハイテク「どしたの?」

呪いのぬいぐるみ「ルーキーくんってバカ?」

ハイテク「うん。そうだけど。なんで?」

呪いのぬいぐるみ「彼の預金口座見たら驚くよー! 全然ナイから」

ハイテク「えっ!? あいつ、仕事は結構取ってきてるんだけど~……?」

 

呪いのぬいぐるみ「だってあいつ、全部スマホゲーのガチャに回してるもん。SS レアのアイドルほしさにさ。もう食費三日分くらいしかないんじゃないかなー。たぶん、明日くらいにお給料の前借りを申し入れてくると思うよ」

ハイテク(ええ! もう、あいつめ……。前借りなんてさせられるほど、メガネプロダクションには余裕はないのに!)

 

少し考えて。長いため息をついて。

ハイテク「じゃ、次のガチャでその SS レアの子を引かせてあげてもらえる?」呪いのぬいぐるみ「いいのー? くせになっちゃうかもよ?」

ハイテク「前借りを頼みに来たら説教しとく~。次はないって」

呪いのぬいぐるみ「甘いねー、メガネウィッチは! 頭パァンってデストロイしたらいいのに!」

ハイテク「……ほんと。まあ、その分稼がせてるけどね」

 

ログアウトして VR ゴーグルを外すと、そこは見慣れた事務所だ。

両手を頭の上で組んでカラダを伸ばし、オフィスチェアーに背中を預ける。

ハイテク(シャワーはみんなが出勤してくる前でいいか~)

ハイテク(三時間……ううん、二時間くらいは寝られそうね)

事務所の電気を消して、来客用のソファに倒れ込む。朝方になってようやく目を閉じると、すぐに眠りが訪れた。

 

*

 

朝、ローガンが事務所のドアを開けると、ソファの周囲にツーポンとグラサン、そしてルーキーが集まっていた。その中心では、ハイテクが眠りこけている。

ルーキー「うっわ~、ハイテク姐さん、まさか会社泊っすか……。なんかもう絵に描いたような社畜っすね……」

ツーポン「いつもわたしたちより先に出社してるから、何時に来てるんだろうって思ってたけど、まさか泊まり込みだったなんて」

ローガン「泊まりというか、ほぼ住んでるんだけどね。ここに」

 

グラサン「……ったく、このソファは俺の場所なんだがな」

ローガンが歩み寄る。

ローガン「しかし珍しい。彼女が寝顔を見せるなんて。ふむ~う」

ローガンとグラサンが目配せをする。

 

ツーポン「とりあえずわたし、起こしますね」

ツーポンが手を伸ばしかけたところを、グラサンが遮った。

グラサン「いいんだよ。ほっとけ」

ツーポン「え?」

ローガン「せっかく珍しく気絶しているんだ。起きるまで寝かせておこう」

ルーキー「あれ? でも僕、今日のスケジュール知らないっすよ! いっつもハイテク姐さんに任せてますもん!」

全員があきれ顔でため息をつく。

ローガン「それぞれ自分の事務机にあるはずだ。全員分な」

ルーキー「あ、ほんとだ。あった、ありました!」

 

ローガン「経理も終わっているだろう」

ツーポン「あ、はい」

グラサン「こいつはもう全部終わらせてんのさ。だから気が抜けたんだろ」

ツーポン「ちょっとすごくないですか、それ……」

ルーキー「社畜の鑑っすね!」

グラサン「ルーキーと足して2で割れば、さぞかしまともなやつができるだろうよ」

ルーキー「うわ、ひでえ……。あー、でも僕、ハイテク姐さんに話があったんですけどね。困ったな」

 

給料前借りの件である。

 

ローガン「あとにしておきなさい」

ルーキー「そっすね。あ~、あと、今朝すんげえいいことがあったんですよ!」

ツーポン「どうしたの?」

ルーキーが得意げな顔でスマホを取り出すと、全員の前に掲げて画面を見せつけた。可愛らしい巻き髪の二次元少女が映っている。

ルーキー「今朝方、ガチャを一回だけ回したら、なんとなんと! SS レアのスーパーアイドル阿東カイ子ちゃんが当たっちゃったんですよっ!! マジ神! すんげえっしょ!! ちょー可愛いっす♥」

ルーキーを除く全員が彼に背を向けて、自身のスケジュール表に視線を落とす。

 

ルーキー「あれ~? みなさん、どうしたんですか? あれ? ちょっと? お~い、ほ~らこれ。画面見て? すごくねっすか?」

音声はこちら

 

グラサン「あ~、俺ぁ仕事だわ。やべえ、すぐに出ねえと間に合わねえ」

ツーポン「わたしも。今日はダイレクト♥アタックのレコーディングみたい。なんだか緊張するな」

グラサン「ばぁか。そんなもん、いつも通りでいいんだよ、いつも通りで。てめえみてえなノロマドジは変に気取ると逆に失敗するに決まってンだろ」

ツーポン「うん。言い方は最低だけど、アドバイスありがとう、パイセン」

 

グラサン「……パイセンはやめろ……」

 

ローガンに肩を押されて事務所から追い出されるルーキー。

ローガン「ルーキーくんも今日は舞台の練習だろう。早く行きなさい」

ルーキー「あっれぇ~?」

 

メガネプロダクションは本日も通常営業である。