駆けろ!メガネプロダクション

EPISODEエピソード

SNS小説『駆けろ! メガネプロダクション』連載第6話の1を配信!
episode13

EPISODE 13

SNS小説『駆けろ! メガネプロダクション』連載第6話の1を配信!

とはいえ――。

できることなど限られていた。

片っ端からオーディションを受け、一般募集のエキストラにまで参加する。ツーポンやルーキーには、その程度のことしかできない。

もちろん結果は惨憺たる有様だ。

業界の老舗企業が裏から手を回しているのだから、エキストラならばともかく、オーディションに合格などできようはずもない。

だが、その一方で。

 

ハイテク「ネットの工作は上々。デジタル付喪神が掲示板やSNSでメガネプロダクションの噂話を流してくれてる」

グラサン「ツーポイントが1stシングルを出した直後だったことが大きいな。ユニットからのあいつの追放は、ファンにとって最大の謎だ。話題にゃ事欠かねえ」

ハイテク「その答えのオフィスらがんにはまだ触れさせてないけど、どうする?」

グラサン「一泡吹かせてやりてえところだが、オフィスらがんはネット民やファンが騒いだところで今更揺らぐような弱小じゃねえ。今は下手に突っついて躍起になられる方が面倒だ。放っておく」

ハイテク「じゃあ、伏せとくわね」

グラサン「おう。それよか、頼んどいた例の件はできてるか?」

ハイテク「災害ボランティアへのエントリー? それならもう終わってるわよ。つか、あんたの名前だけ最初からあったんだけど」

グラサン「常連だ。文句あんのか? あ?」

ハイテク「ないけど。ぷ、くくっ。に、に、似合わなぁ~!」

グラサン「……笑うな。だからてめえらにゃ知られたくなかったんだ……」

ハイテク「で、こんなことしてどうするのよ? オーディションにでも行かせた方がいいんじゃない?」

グラサン「気晴らしだよ、気晴らし」

 

*

 

2tトラックに三人並んで座り、割れたアスファルトの上を走る。

運転しているのはグラサン、真ん中にツーポンが座り、助手席にはルーキーがいる。荷台はインスタント食品や水などの物資でいっぱいだ。

 

ルーキー「なんで僕たちまでこんなこと~……」

グラサン「うるせえ。どうせ仕事なくて暇なんだろ。黙ってついてこい」

ツーポン「仕事じゃないけど、オーディションはあったのに……」

グラサン「ハッ! どうせ受かりゃしねえよ。オフィスらがんの圧力があんだからよ」

ツーポン「まあ、そうなんですけど……」

グラサン「しばらくはオーディションも行くな。時間の無駄だ」

 

ツーポン(元はといえば、わたしがセンターになってしまったことが原因で……)

ツーポン「……でも、こんなことをしていていいのかなって」

グラサン「時には遠回りも必要だ。前へ向かうことができなくなったら、横から回り込めばいい。そういう時もある」

ツーポン「はあ……」

グラサン「ま、深く考えんな。気晴らしだよ、気晴らし。うまくいかねえことを延々と一人でやってたって、どうせ塞ぎ込んじまうだけだろ」

 

到着したのは、とある小学校の校庭だった。

そこには多くの人々が集っている。老若男女問わず、いずれも沈み込んだ顔つきをしていた。

 

ツーポン「これって……」

ルーキー「ああ、先週あった洪水の――」

グラサン「おおよ。付近の川が氾濫して避難はしたものの、水害が落ち着いても家が流されたり危険が残っていたりで帰宅困難になっちまった地域の人たちだ。この小学校の体育館が避難所でな」

トラックから降りたグラサンへと、地域の代表者が駆け寄ってきた。

すぐさま簡易テーブルが用意され、その横へとグラサンと数名の若い人間たちが、荷台の物資を下ろし始めた。

 

ツーポン「わたしたちも行こ」

ルーキー「うぃっす」

列を作り始めた避難民へと、簡易テーブル越しに水とインスタント食品を配給していく。一つ一つ手渡しをしていくと、皆一様に感謝の言葉を述べた。暗い表情で暗鬱につぶやく人もいれば、疲れていながらも笑顔で言う人もいる。

ツーポン(こんなことをしていていいのかな……)

なんだかんだでルーキーは、笑顔で楽しそうに食品を配っている。

ルーキー「あっちゃあ~。家が流されちゃったんですか~。僕には何もできないけど、これでも食べて元気出してくださいよ~」

避難民「おい、兄ちゃん。何笑ってんだよ。他人の不幸がそんなにおかしいか?」

ルーキー「いやあ、他人ってゆーか。実は僕らもそうなりそうですし?」

避難民「あぁ?」

ルーキー「僕らメガネプロダクションってところのタレントなんですけど、意地悪なライバル会社に圧力掛けられちゃって、仕事がぜ~んぜんないんですよ。このままじゃ三ヶ月ももたなそうで。社長は過労で事故って倒れちゃうし、事務所が倒産したら、僕らも帰る場所なくなりますしねえ。――ね、ツーポンさん?」

音声はこちら

ツーポン「あ、うん……」

ルーキー「んで、パイセンが気晴らしにってボランティアに連れてきてくれたんです。結構楽しいっすね、これ。感謝されるのが嬉しいや」

避難民「えぇ~……」

ルーキー「は~ぁ。けど、どうしよ。僕、宵越しの金は持たない主義だから、仕事がないと速攻で路頭に直行なんすよね。あははは、困った困った」

避難民「お、おまえら……何やってんだ、こんなとこで……。自腹切ってボランティアなんぞしてる場合じゃねえじゃねえかよ。ヘラヘラしやがって」

ルーキー「あっはっはっ、ほんと、何やってんですかね?」

避難民に逆に心配されるルーキーの様子に、ツーポンも思わず笑みを漏らした。

ツーポン「あはっ、ほんと、どうしよう? おじさん、よかったら宣伝しといてください」

避難民「しゃあねえなあ。なんかメガネのゲーノー人が来てるって言やあいいのか?」

 

それぞれの名前を告げて、しばらく。

配給に並ぶ列に変化が生じた。これまで中高年がほとんどだったのが、若年層が混ざり始めたのだ。

 

ーつづくー